ちからの象徴の生き物たち
紋章にしばしば登場するライオン。これは、力、権威の象徴です。
このライオンの紋章は、生息地の関係からヨーロッパでは豹と混同されて描かれることもあったそうです。ライオンは、大昔にはヨーロッパにも生息していたらしいのですが、西暦100年ころには絶滅してしまい、今はアフリカのサハラ以南あたりに生息してます。
ある本*1を見ると、ライオンも初期ゴシック時代のものでタテガミが描かれてないものがありました。豹との識別方法として、顔がこちらを向いているかどうか(向いているのが豹)で見分けるというものをネット発見しましたが、リチャード1世のライオンの紋章は顔がこちらを向いています。結局どう見分けているのでしょうか?
ちなみに、混同ついでに生物学的にライオンと豹をみると、豹のお父さんとライオンのお母さんから生まれた子がレオポンです(ライオンは豹属。豹属は異種間でハーフができます。)。
そのライオンの象徴の話に戻ると、ライオンはサンマルコの象徴で、ゆえにヴェネチア共和国の紋章です(サンマルコがヴェネチアの守護聖人だから)。本を持った翼のあるライオンです。ちなみに、あやっちは、ヴェネチアのこのライオンが好きです!!
そういえば、ローマ時代に、闘技場でキリスト教徒をライオンに襲わせるという絵がありました。こちらは残酷なもので、権力の怖さあでもあります。王や騎士が用いたライオンの勇敢さではなく、獣性が感じられます。
それに、 ライオンは百獣の王であっても、狩はメスがするんですよね。。
ところで、力強さの象徴として、空の王者・鷲もその象徴です。現在でも、アメリカをはじめさまざまなところで、強さのシンボルになっています。ローマの軍旗も鷲であったと聞きます。
その鷲とライオンの両者を合わせた想像上の生物として、グリフォン(グリフィン)がいます。グリフォンは、グリュプスとも呼ばれ、鷲の頭と前足、羽、ライオンの身体のものと、頭がライオンのものがあります。絵柄を見ると、なんとも愛らしい(想像上の)生き物です。
グリフォンの発祥はメソポタミアらしく、スキタイ、インド、中国と広く世界に拡がったようです。
その象徴は、鷲と獅子の合体なので王家の象徴であり、また、黄金の守り手であったことから知識の象徴であるともされます。知と言えば、ライオン由来のスフィンクスもなぞなぞを出すくらいですから、知に関係していそうですよね。
また、グリフォンは雌馬との間でヒッポグリフ(鷲の上半身と馬の下半身)という子供を作るともいわれます。ライオンが豹属の他の種との間にハーフを作るのと似てますね。。
ところで、ヴェネチア共和国のライオンは翼があります。だから、グリフォンですよね?
「怪獣グリフィン文双耳壺」(イタリア6世紀 東京富士美術館蔵)
ライオンと鷲とグリフォンをみてきましたが、“力”の象徴というのは、人が見て、その生活する地域で“力強く”認識された生物がモデルになるようですね。
身近でなければ認識されないでしょうから、身近は必要です。近くにいないもののイメージは身近なものと置き換えられる。ライオンが豹と混同されたのと同じことです。
そして、“力強い”は、あくまで人の認識。それは、他の動物を捕食することからイメージされているようです。しかも、その動物の実際の行動ではなく、人の皮相的な観察と思い込みによってイメージ化される。それに、その動物への人間のおそれが原因かもしれませんね。